田代さん、と呼ばれることは昔から多い。
初めてバイトをしたのは高1の4月、15歳、近所の回転すし屋。初日、裏口から入った僕をがたいのいい男(すぐあとでたかだか1つ違いの高2だと知る)がくわえ煙草で迎えたり、休憩中、高校生バイトの同僚(といっても、はるかに大人に見えた)と一緒に残り物のさばをつまんでたら、「へー、さば食べれるんだー。あたしだめなんだよね」「俺もだめ。青物って」「わかるー」「でも、さば食べれるやつってクンニうまそうじゃね? なあうまいの?」「え?うまいの? じゃあ今度あたしにやってもらおっかな」とか、そんな会話が周りで沸き起こったりと、オナニーも知らない15歳にはきついようなことがいろいろあったわけだけれど、一度、忙しい厨房で高校生バイトの女の子に「田代さん!」と呼ばれたときが正直、いちばんこたえた。
言うまでもないけど、職場に15歳未満の人間がいるわけがない。それなのに「田代さん」と呼ばれたとき、はっきりと「弾かれてる」と思った。嫌われてる、とかそういうレベル以前の問題だった。
それは僕にも原因があった。シャリに酢をうまくからめることができなかったし、声が小さくて厨房じゃ使い物にならなかったし、休憩中だってまともな会話ができなかった。話を聞いてもなにをどう返したらいいのかまったく思いつけなかった。かといって自分からはまったくといっていいほど話さない。
そういうもろもろが一気に押し寄せ、僕は僕を内心でボロクソに責め始めた。だからバイト先へ足を運ぶのが苦痛でしょうがなくなった。だから2ヶ月でやめてしまった。
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