たとえば大学の同級生から「田代さん」とか呼ばれると、一抹の寂しさを覚える。歳がだいぶ離れてるから仕方ないこととはいえ、でもやっぱり寂しい。
だからこそ、ゼミのみんなが僕のことを「田代くん」と呼んでくれるようになったときは、とてもうれしかった。浪人を繰り返して留年を経て突如としてゼミに入ったはるか年上の僕は単なる汚物で、彼らの貴重な大学生活を汚しているのだと自覚するたび、学校をやめたほうがいいのだと、いつだって考えていた。そんな人間のことを、彼らは「田代くん」と呼んでくれた。なにか、とても尊いものをもらった気がした。
彼らのことを、僕は信頼しきってしまっている。ボケればちゃんとツッコんでくれるし、間違ったことを言えばきちんと訂正してくれる。彼らの言うことを否定してみたりしても、「いやそれは違う」と真っ向から自分の考えを言ってくれもする。
今年の4月、僕の髪型が角刈りだったころ、ガイダンスに現れた僕を見て噴き出した人がいた。今年の8月、そのころのことを指して、「田代くんが角刈りにしてきたとき、ゼミに衝撃が走った」と言った人がいた。どっちも、僕のことを信頼してくれてないとできない反応だと思う。「田代さん」と呼ばれるような存在のままだったら、きっと陰で笑われるだけで終わっていた。
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