今やってるアルバイトの話をもうひとつしようと思う。
本当にいろんな人がいる。
やめた人の代わりとして入ってきた、35歳の人がいた。
初日、彼が話しかけてきた。派遣に登録していろんな職場を渡り歩いている人で、どんな職場を経験してきたか、という話のあと、こう言い出した。
「前の職場でかわいい子見つけてさあ、ひと目惚れしちゃったんだよね。番号とかアドレスとか聞こうと思ってたんだけど、なかなか聞けなくて。もう告っちゃおうと思ってたんだけど、派遣の期間が終わっちゃって、だめだったんだー。でも、ここでもかわいい子いた。なんか、またひと目惚れしちゃったみたい。つきあってくれるかな。っていうか番号とか教えてくれるかな。っていうか、そんな高望みしない、せめて友だちになれたらいいな」
その話を一緒に聞いていた39歳の人はあとで「あいつ、何しにここに来てんだ」とこぼしていた。
本当にいろんな人がいる。
1度だけ隣のセクションの応援に行ったとき、そこにいた人と話した。歳はわからないけれど、五十嵐の近くに住んでいるということで、あの辺の環境についての話が弾んだ。寮の裏手の土建現場で働いていたこともあるらしく「表通りにはかわいい子多いんだけど、なんであっちのほうは、ああいう、垢抜けてない感じの子が多いんだろうね。なんか、勉強!って感じの子ばっかり」「ああ、あっちのほうにあるのは工学部で、ちょうどその反対側に法学部とか人文学部とかのきれいどころが集まる場所があるんですよ」「そっかー、きれいどころかぁー」
そんな話をしていた。そしたら、「あっちのほうはいいよねー」と言って、僕の働いているほうのセクションを指差した。
「こっちは男だけだけど、むこうは女性がいていいよねー。ま、あんまり若いのはいないけどさ」「そうですねー」「でもさ、ひとりだけかわいい感じの子いるよね。あの子って、どうなの?」
じつは、ふたりの言っている「かわいい子」は、同一人物を指している。
彼女は聞くところによると31歳で、もちろん結婚している。かわいいかかわいくないか、と尋ねられれば、確かにかわいいと答えよう。顔が、という意味ではない。むしろ顔は人並みと言ってもいい。ただ、彼女と話しているときに感じる感覚が、大学でとあるかわいい女の子と話しているときの感覚に似ている。そういう意味で、確かにかわいいといえなくもない。
けどさ、そんなに「かわいいかわいい」って騒がないでほしいんだ。悲しくなるから。泣けてくるから。そんなに騒ぐほどじゃないだろ。大学に来てみろよ。
だって、彼女をかわいいって表現するなら、大学で歩いてる本当にかわいい女の子のことはどう表現するんだ? 「夢」か?「奇跡」か? そしてその辺を歩いてる男は、そんな女の子たちと普通につきあってるんだぜ? その現実を、あんたらどう認識するんだよ、なあ。
悲しくなる。吐き気がする。なんだこの格差。
そして、僕は今そんな「大学生」をやってるんだ。
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