「今度ナンパしに行こう」
このあいだ、友だちが唐突にそう言いだした。「高校のころの友だちでこういう遊び全然やってこなかったよね」ほんとに、狂おしいほど唐突だった。そして呆れるくらい軽かった。まるで、「今度パチンコ行こうぜ」と言うかのように。
いやいや、僕は自分の記憶力に最近自信がない。彼はもっと違う言い方をしたかもしれない。そもそも彼にとっては唐突でもなんでもなかったのかもしれない。人とのコミュニケーションの取り方とか、そういう話をしてたから、それと地続きで思いついただけなのか。
「目標をどこに設定するかが問題だよね。ただお茶をして話をするだけなのか……」
思考を空転させていた僕を尻目に、彼の中では急速に計画が練られていく。「場所はどこがいいかな……。古町?」
本気だ。
リアリティがあった。
僕は第四銀行本店の前を歩く女の子2人連れに声をかけている自分たちを想像する。
緊張して声が小さく低くなった僕の第一声は彼女たちに届かない。代わりにバス待ちのおばさんの耳には届く。女の子に声をかけて無視された、わけではないことを装うため僕は急いで友だちの顔を見る。あくまで、隣を歩く友だちに声をかけたんです。そう周囲にアピールする。しかし友だちは気恥ずかしそうに顔を逸らして僕を見ない。この野郎。
あるいは、旧北光社の近くにあるミスドで声をかけようとしている。
4人座れるテーブルに2人でいる女の子に近づく。きっとそのとき僕は、テーブルに置いてあって縦に収納されている固いティッシュみたいな、汚れを拭けるナプキンのようなものを見ていて、これって正式名称はなんなんだろうとか、置いてあるポップに書かれた◯◯セット¥300とかを見て、ああ3と10の公倍数だなあ、とかそんなことを考えている。そうやってテーブルに近づいて、さて口を開いて精一杯声を張って言うのだ。
「座っていいすか?」
――危ない。中央署はすぐ近くにある。
せめて富山とか、万に一つも知り合いに目撃されない場所に行きたい。
どうなることやら。
どちらにせよ、おもしろそうなことをやることについてはいつだって僕は賛成してきた。
その後、所持していたナンパのハウツー本を彼に貸し出した。こんなの(
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4344003608/ref=cm_rdp_product)。なぜこんなものを所持していたのかは自分でもわからない。
これを読んで彼が満足すればいいな、と思う一方で計画倒れになったらつまらないな、ともより強く思う。
追記。
まったく話は変わるが、最近民放を見てると頭がおかしくなりそうだ。ACのコマーシャルは本気で国民を洗脳しようとしてるんじゃないだろうか。何度も何度も際限なくああいうの見せられると、意地でも思いやりなんて見せてやるもんか、って思うのは僕だけだろうか。
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