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 大学生なんてやってて、それもこんなシケた顔さらしてたからか、宗教の勧誘にあったことがある。

 あのころはとにかく人恋しくて死にそうだったから、けっこう何度も何度も話を聞くハメに陥った。彼らの話によれば、とにかく毎朝毎晩会ったこともない神様的な存在に向かってお祈りを捧げていれば自動的に幸せになるという話だった。
 もちろん信じたわけじゃないけれど、とにかく1回やってみた。まったくなんの気配も無かった。気持ちが入ってないからだと言われた。ヒマな僕は徹夜明けの朝6時、祈りを捧げてみた。騙されたつもりになってけっこうマジで祈ってみた。30秒ももたなかった。ベッドの上で正座して小声で祈りを捧げる自分の姿が情けなくて涙が出そうになった。すぐに無かったことにした。ベッドに横になって毛布にくるまり睡魔に身をゆだねる瞬間だけは確かに幸せだと思えた。

 なかなか宗教心に目覚めない僕に、彼らは地獄の存在について説いて聞かせた。なんでも地獄にもいろいろ種類があるらしく、きみはこのままだと死後、その中でも最恐といわれる地獄に落ちるよ、と言われた。死後! ちょっと笑いそうになってしまった。死後とか、あまりにも遠すぎる。
 たとえ死後地獄に落ちることになったとしても、その瞬間瞬間を今生きている僕は、毎朝毎晩どこか遠くを見ながら祈りを捧げるこっけいな自分の姿なんか絶対に許せそうにない。いつのことなのかわからない、来るかどうかすらわからない後悔なんかより、その時々で自分が感じる思いのほうがはるかに尊いものだと思う。

 ちなみに、そのあと彼らの宗教において絶対の禁忌とされるうちの1つである神社参詣を行なった。初詣だった。1月1日に白山神社と護国神社に行っておみくじ引いたら両方とも大吉だった。

 たとえば、彼らはどうするんだろう。我慢して我慢して生きて、生き抜いた死後の世界、そこには地獄なんて意味のないものはなくて入場制限なしフリーパスの天国しか実装されてなかったとしたら。あるいは成仏を目指して一心不乱に精進を重ねたあげく、閻魔さまあたりに「は? 成仏? なにそれおいしいの」とか言われたら。80年単位の未来を考えるっていうならそれくらい想定しないとだめだろう。でもそんなの、考えたって意味がない。だからいやなんだ。2年後なのか3年後なのか、10年後なのかも20年後なのかも確定できない、たんに「いつか来るはず」という意味だけしか持たない漠然とした「未来」なんて言葉を使うのは。

 だからその手の宗教にかぶれている人たちは、失礼だけど(本当に失礼だと思うけれど、事実として)バカなんだと思う。

 けれど、そんなバカのはずの集団の中にも、尊敬できそなくらいかっこいい男や間近で目をあわせられないくらいかわいい女の子は何人もいた。
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