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 石田が続いて話そうとしていたのは、今の彼女との馴れ初めだった。

 同席していた友だちが、「前聞きましたけど、ドラマみたいですよね」と言った。僕が25、友だちが24、石田も同じ24。けれど、僕たち2人は石田に対して敬語を使っていた。それがもっとも自然に思えたからだ。

 前述のとおり、石田は高校時代の彼女と別れてからずっと彼女が欲しいとお祈りし続けてきた。彼は高校を出てすぐに工場で働きはじめたから、女の子との出会いが乏しかったというのもあったんだろう。でも、昨年、運命的な出会いを果たした。

 ふっと思い立って、ケータイのメールアドレスを変えようと思いついた。友だちとふざけて英和辞書を開き、適当に単語を選んだ。「これなんかおもしろくないか?」友人が指さしていたのは、aから始まる「死刑執行反対主義者」という意味の単語だった。

 アドレスを変えてから数日後、彼のケータイに空メールが届いた。発信者は知らないアドレスだ。心当たりのある友人に聞いてみるも、誰も知らないという。石田は、その空メールに対し「誰ですか」と返信した。返ってこない。「誰だ?」と今度は強く迫ってみた。やはり返ってこない。何回か繰り返し、「俺は石田○○だけど、おまえ名前名乗れよ」とメールを送ったとき、はじめてメールが返ってきた。文面には女の子の名前があった。
「それでまあ仲良くなっていって」と石田は言った。

 ところで、一般的に、彼女との馴れ初め、というタイプの話を聞くとき、キーになるのは出会ったときと告白したときとそれから今現在までのことで、出会ってから仲良くなっていった過程はたいてい省略される。それはあまりに当たり前のことだから語るまでもないと思っているからなのか、それとも、思い出に詰まっている出来事だから一見の人間には語りたくないと思っているからなのか、それとも、本当は語りたいけど長くなるから語れないと判断したからなのか、わからない。僕としてはその「仲良くなる過程」こそが傾聴して参考にすべき情報なのだけれど、案の定石田も、「それでまあ仲良くなっていって」と言ったあといきなり、「告白された」と続けた。
 
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